« 前橋、名前の無かったもの巡り③前橋駅前 『建設と平和』像。第6回「日展。在野にして在野にあらず。」 | トップページ | 「開放厳禁」の張り紙はダテじゃない。 »

2012年12月 9日 (日)

前橋、名前の無かったもの巡り③前橋駅前 『建設と平和』像。第7回「モニュメント」

第7回「モニュメント」

Dsc_0612

ここに、一冊の作品集があります。

これは、分部順治(わけべじゅんじ)が晩年(1980年代後半)自費出版した自分の作品集です。

Dsc_0614


多作であった彼が、代表作をまとめ出版しました。

自費出版でしか作品集がないのかと言いたくなる方もいらっしゃるとは思いますが、結局はそうなのです。それについて、私はなんら言うことも思うこともありません。

自身の作品を、素晴らしい写真で振り返っていますが、最後の、あとがきの前のページには非常な違和感を覚えずにはいられません。

Dsc_0615

小さく、そして紗がかかって、出版当時の前橋駅前の銅像(当時)が載せられています。


しかし、この銅像は彼にとって初めてのパブリックアートです。依頼を受けて丹精込めて製作したものなのです。


彼はこの二体の男女の銅像を、自ら、東京練馬の当時のアトリエから前橋に運び込みました。

Dsc_0177

当時の新聞は、彼の熱い意気込みが、写真付きで大きく取り上げられています。

銅像の依頼主がこの記事が載った上毛新聞社ということもありますが・・・。

しかし、紙面での扱いはこの先次第に変わっていきます。それは後ほど・・・。

この記事で、彼は「平和と建設を主題に着想を練り・・・」と語っていますが、作品名を明らかにしていません。

実際の銅像が建つ台座の「建設」と「平和」の記銘は当時の前橋市長です。分部本人が名づけたわけではないのです。



彼が自ら銅像を持ち込んでから、実際に駅前に建ったのは1年後です。

おかしい・・・?この記事ではすぐにでも建つと書いてあるのに・・・。



そしてここで注目して頂きたいのは、この時点で男女の像は別々なのです。写真には二体を遮る板も写ってはいません・・・。



振り返って、彼の作品集を見てみると、巻末に作品目録が添えてあります。



彼は、自分の作品に、一文字か二文字の凝った作品名を付けるのが主でした。そういった作品名が並ぶ中・・・。


Dsc_0619


最後に記された前橋駅前の銅像には、「モニュメント」としか記載がありません。

彼らしくもなく、名前を付けていないのです。



この作品集は県立図書館に寄贈されたもので、書庫からわざわざ出していただいたのですが、手書きで添えられている「1953」「S28」「(前橋駅前)」の文字は本人か図書館員か誰が書いたかは不明だそうです。



ということは、この作品集が出版された当時、あの銅像は年代も場所も明確に記されず、そして名前もなく、写真も非常に小さく最後のページにうつろに載っているという扱いだったのです。


分部にとっては記事で熱く語るように、非常に思い入れのある、日本では黎明期のパブリックアートです。


なのに彼はずっとその銅像に名前を付けなかった。写真もひどい。じゃあ作品集に載せなければいいじゃん・・・。なにか不満があったのか?・・・でも載せた・・・。


彼のあの銅像に対する強いわだかまりを感じてしまうのです。


出版当時、前橋駅前の銅像は相変わらず板を挟んで背中合わせでした。・・・その姿は、彼が製作した本来の姿ではなかったのでは・・・?


何らかの理由により、彼が意図した形でない姿で、除幕式を迎えたのではないか?


第2回「街に『ハダカ』がやってきた」で書いたように、当時裸体像に嫌悪感や違和感を覚えるという空気はあったでしょう。「裸の男女を並べて建てるなんて・・・。」という圧力があったのかもしれません。




作品集が出版された後、彼の生前中に平成の前橋駅前の再整備が行われ、銅像は今の形になりました。板は取り払われ、男女は並んで建っています。



作者の承諾を得ずに、あんな風に作風を変えることができるでしょうか?



出版当時、もうすでに前橋市に強力なコネクションを築いていた分部が(前橋各所にあふれる作品数でもわかります)、積年の想いを市に持ちかけたのではないでしょうか?




「あの銅像を・・・、元の形に戻してくれ・・・。」と・・・。



« 前橋、名前の無かったもの巡り③前橋駅前 『建設と平和』像。第6回「日展。在野にして在野にあらず。」 | トップページ | 「開放厳禁」の張り紙はダテじゃない。 »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1654299/48136484

この記事へのトラックバック一覧です: 前橋、名前の無かったもの巡り③前橋駅前 『建設と平和』像。第7回「モニュメント」:

« 前橋、名前の無かったもの巡り③前橋駅前 『建設と平和』像。第6回「日展。在野にして在野にあらず。」 | トップページ | 「開放厳禁」の張り紙はダテじゃない。 »

無料ブログはココログ
2016年12月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

ウェブページ